小説「王子と乞食」(原題 The Prince and The Pauper)
ご存知トムソーヤーの冒険を書いたマーク・トウェイン(Mark Twain)の作品です。500ページを超える大作ですが、若年層を読者に想定した作品であり、何よりもスリルあふれる展開に引き込まれ、あっという間に読んでしまいます。
小学生、中学生が読めば一生の糧になることでしょう。ダイジェスト版を読むのも決して悪くありませんが、やはり原作本を読むのをお勧めします。
この書をひもとき、王子がヘンリー八世の嫡男であり、のちのエドワード六世(1537年 - 1553年 チューダー朝のイングランド国王)をモデルとしていることを知りました。もちろん歴史に忠実なわけでなく、歴史をベースとした空想小説です。例えれば水戸黄門みたいなものだと言えばちょっと興ざめでしょうか。
当時のロンドンや雑多な人間模様がきわめて興味深く描写されています。また挿絵が秀逸です。
王子と乞食の立場がひょんなことから入れ替わります。それぞれの生まれと境遇は天国と地獄でしたが、こんどはそれぞれが相手の運命を受け入れざるを得なくなります。小説は、ふたりのその後の展開をそれぞれ正と負が対称するように描いていきます。
彼らを取り巻く人間の身勝手さ、醜さ、それに翻弄される王子と乞食の運命から目が離せられなくなります。
この小説は決して単なる児童小説などではない。モンテ・クリスト伯のような波乱万丈の冒険小説です。
この挿絵は、ウエストミンスターでの国王戴冠式に現れた真の国王となる王子(エドワード)とそれまで偽りの王位にあったトムの再会の場面です。
トムは王子の前に膝をついて人々に真実を述べるのでした。
風戸 俊城