シンゴ旅日記インド編(82)我輩は牛でんねん 方言の巻

我輩は牛でんねん 方言の巻 (2010年9月記)

誰でっか、我輩を呼ぶんわ。

あれっ、ギフのオッサンやないですか?

珍しいでんな、そっちから声掛けてくるやなんで。

ほんじゃ、『やっとかめや、なも』。

えっ、恥かしいから、ギフ弁で言うなって。そやけど長いことお会いしませんでしたな。

えっ、あっちゃこっちゃへ出張で行ってましたんかいな。

どこへ行きましたん?ベンガルール、チェンナイ、コルコタですって。

何やそれを言うならバンガロール、マドラス、カルカッタでんがな。

どこもかしこも、町の名前を勝手に変えてしもて。

いやいや、我輩の承認は要りませんけどね。

我輩、よう分からんのですわ。

例えばな、ムンバイゆうたら、昔のボンベイやがな、ボンベイのまんまでエエがな。

歴史ある名前やないか。

あれっ、あんさん、何か勘違いしてませんか?ポンペイと。

それイタリアのナボリの近くにあった町やがな。

火山の灰で埋もれてもた町やがな。世界遺産なんやで。

そんでもな、インドのボンベイの名前な、まだ今でも使われてまっせ。

昔の名前で出ています、ちゅうやつでんな。

ボンベイ証券取引所、BSEでっせ。

有名な株式指数はSENSEX30でっせ。

あんさん、なんか変なこと考えたんとちがいまっか、一瞬目つきが変わりましたで。

そしてボリウッドでんがな。

ムンバイやったらほんまは『ムリウッド』でんがな、けど、そりゃ、無理ウッド。

えっ、分からんてですか、このシャレ。すんません。

そんで、あんさん、どないしたんでっか、何か言いたそうやないですか。

言いなはれ、言いなはれ。イワンの馬鹿なんちゃって(しもた、古いシャレ言ってしもた。)。

何ですって、行った場所、場所で言葉と文字が全部違ったて、ちゅうんですか?

そうでんがな、バンガロールはカンダナ語やし、マドラスはタミール語やし、カルカッタはベンガル語でんがな。

それがどないか、しはりましたか?

えっ、夕食を済ませて、ホテルへ戻って、すること無いもんで、テレビを見とったら、その地方の文字と言葉で喋っとるようやったんで、びっくりしたってですか?

新聞も、その土地の文字で書いてあるようやったってですか?

あんさん、そりゃ、そうでんがな、当たり前だの何とかでんがな。これ何ですかって?

当たり前だのって、知りませんか。

昔、流行ったそうでんがな。マコト・フジタ、ミノル・シラキそれにウタコ&ケイスケでんがな。イチローさんもいましたな。

マリナーズのかって?ちゃいまんがな、そんな時にスズキさんまだ生まれていませんがな。ザイズさんでんがな。『~してチョウダイ』でんがな。

これらな、みんなコーべのイトコが教えてくれましてねん。

どうやって教えてくれたってですか?

そりゃ、ITB、インターナショナル・テレバシー・バンドちゅうやつですわ。

あのな、神さんのな、衛星のな、、おっと、アカン、アカン、もうちょっとで、神さんに怒られるとこやった。

あんさん、聞かんかったことにしといてや。

絶対やで。指切りやで、指切りゆうても我輩の場合はヒズメ切りやけどね。

そんでな、この国ではな、国というか、州ごとにな、文字と言葉があるんでっせ。

そんで、そのお国ごとにTVでも新聞でも使う言葉が違うんですわ。

日本でもそうとちゃうんでっか?

我輩のオトンはコーべでカンサイやろ、あんさんの田舎のヒダはナゴヤ地方やろ、そんでナンブはトーホクやろ。

そんで、それぞれの言葉でニュースを言い、新聞に書くんでっしゃろ?

そやそや、地方の言葉ちゅうたらな、この前なワギュウ・ハーフの会でな、わてな、こう見えても、副会長でんねん。

前に聞いたってでっか?

会長は誰やってるか知ってまっか?マツサカのニイサンでんねん。

ニイサンとこが何でも我輩らのタネモトらしいですわ。

そんでな、ハーフの会でな、ナンブの奴がな、自分のことをオトンの田舎の言葉では『オラ』ちゅうと言ってまんのや。

おもろかったでっせ。オラ、オラでっせ。なんやそれ。

玉蹴りの応援か。(あれはオレオレか、ちゃう、それは詐欺やな。よう分からんわ。)

そんでな、みんなでな、自分のな、オトンの産まれた田舎の言葉で話そうやないかってことになりましてな。

トーキョーのな、アナウンサーさんが言ったことをな、みんなのオトンの国の言葉でどない言うかってことになったんですわ。

アナウンサーさんが、『ただ今、ニュースが入りました。今朝、富士山が400年ぶりに噴火しました。その火山灰が1500m上空まで舞い上がりました。しかし、飛行機の運行には影響していません。亡くなった方もなく、近くの人はみな非難して無事でした。』って言ったちゅう寸法ですわ。

そんでな、エヘン、副会長やろ、我輩。

そやから、一番先に話なさなあかんやろ。よってにな、オトンから聞いとった同じコーべ出身のな、ヨドガワさんの口調で言うたんや。

『ハイ、みなさん、大変ですねぇ。大変ですねぇ。富士山が火を噴いたんですねぇ。400年ぶりですねぇ。まぁ、恐ろしいですねぇ、怖いですねぇ。火のハイが舞い上がったんですよ。1500mですよ。高いですねぇ。本当に高いところですねぇ。ハイ、タワーリン

グ・インフェルノですねぇ。飛行機には影響がありましせんでした。ハイ、大空港です。エアポート75です。77も80もありましたねぇ。でも、お亡くなりになった方ありませんよ。奇跡ですねぇ。奇跡の人ですねぇ。ハイ、ヘレン・ケラーですねぇ。アニー・サリバンですねぇ。1959年と言えば昭和34年ですよ。知ってはりますか?その奇跡の人の舞台で誰が主人公をしたか。ハイ、実はあのパティ・デュークなんですねぇ。日本でもテレビで人気ありましたねぇ。パティ・デューク・ショー。ご存知ですね。あのお転婆娘ですねぇ。1962年のアカデミー賞ではサリバン役のアン・バンクロフトが女優主演賞、ヘレン・ケラー役のパティが女優助演賞を取りましたね。ハイ、良かったですねぇ。良かったですねぇ。それから17年後の1979年のリメーク版ではパティはサリバン役で出ていましたねぇ。時代はメ

グルですねぇ。そうそう、富士山の噴火でしたねぇ。近くのみなさんはね、大脱走したんですよ、逃亡者ですねぇ。ハイ、デビット・ジャンセンです。さびしい顔、してましたねぇ。追われる人の表情、うまく出していましたねぇ。しびれますねぇ。1993年のリメークではハリソン・フォードが主演していましたねぇ。ちょっと雰囲気が違いましたねぇ。この逃亡者のドラマの最後がどうなるか、それはみなさん、映画を観てのお楽しみですよ。ハイ、それでは、サイナラ、サイナラ、サイナラ』ってね。

しかしな、これな、あんまり受けませんでしたわ。

長すぎたんですわ。それに我輩の仲間な、ヨドガワさんを知りませんねん。

けどな、これな、オトンには受けたんでっせ。『映画って本当にいいもんですね』ってバージョンもありまんねん。

えっ、エエ画の話は、もう、エエってですか?

そんでな、次にな、ヒダの奴がな、ギフ弁ちゅうか、ナゴヤ弁で言うたんでっせ。

あの口下手のヒダがでっせ。

『おミャーさんた、ドエリャアことがおきたでナモ。オソギャーで、イカンわ。冨士山がヨー、ケサヨー、ヒィー吹いてヨー、飛行機にはヨー、エーキ ョ―がニャーと言っとらっせるでナモ。死んでまった人はヨー、おらんでナモ。みんな逃げんさったでナモ。そんで、次のキャーのニュースも見てチョーよ。えっ、ワテかね?ミナミだがね。トシアキだがね。テイキ ョ―は「エビ・フリャ-もあるでヨー」のアツタ食品だがね。トロイこと言っとったらアカンでね。』

これね、ちょっと受けたんですよ。でもね、ナンブの奴が、よう分からん言うんですよ。

それでね、ナンブの番になってね。あいつがね、こう言うたんですわ。

『オバンでガス。オラ、オッタマゲターでガス。スンズリ・カエッタース。スズサンがスンカスナスったダト。ヘーッコがスラにあがったんダドモ、へコーキはモンダーナーでガス。スンだシトさ、イネーでガス。にげたシトさ、ばっかダー。ダバ、ヌースみてケロや。』と言ったんですよ。

メチャ受けでんがな。

みんなが何のことか理解できんゆうてね。

どこの国の言葉だって。我輩ら2世やから、お互いにオカンの国のことばで理解し合えまんのやけど、ナンブのオトンの国の言葉はよくワカンネーナ。

あれっ、ナンブの言葉がうつってしまいましたがな。

そんでね、いつもはその会に参加してもね、隅におるサツマの奴にね、オトンの国の言葉では、どう言うかって聞いたんですわ。そしたらね、あいつのオトンの国ではオスはあんまりじゃべらん、と言いますのや。

エエから言ってみぃ、ちゅうたらね。

『オイドンは、びっくりしたでゴワス。富士サンが、火ば吹いチョルとモースとでゴワス。桜島と同じでゴワス。空とぶ黒船は問題ナカ。タミも問題ナカ。西郷ドンば殺した維新は間違っとるでゴワス。』って何か意味のよう分からんこと言うんですわ。

おもろい奴でっしゃろ。

でね、その時ね、トーキョーに行ったことがあるちゅう奴がいましてね。

シンシュウ出身のモトチジオって言いまんのや、そいつ。

トウキョウでは『ひ』と『し』が入れ替わるちゅうんですわ。

『火の用心』を『シのヨウジン』て言うんですって。

そんで『火の後始末』は『シのアトヒマツ』って言うんですって。

あれっ、ヒマツといえば我輩の『飛沫』があんさんの足にかかりましたか?

我輩な、分からんようにしたつもりやけど。最近な、緩んでまんのや。

ちょっと年やさかい。カンニンやで。

我輩らもな、友達と会うとな『ケツアツ』やとか、『トウニゥウ』やとか、『ニゥウサン』やって言うてな、会話が始まりますんでっせ。

あんさんの同窓会も同じやってですか。

えっ、『ケツアツ』が牛にもあるのかって?

『穴(ケツ)圧』でっせ。

わてら牛はケツ圧が大事でんねん。食事の場所取るにも、フンギリするにもケツ圧が必要やがな。

お尻フリフリちゅうやつでんがな。

『糖尿』?違いまんがな。『ニョウ』やのうて『ニュウ』でんがな、『糖乳』でんがな。

メスさんたちな、乳の中なの糖分を気にしてまんのや。

高う売れるかどうか糖乳値によって決まるさかいな。

イマドキのな、若いもんな、ダイエットやゆうで、あんまり糖分を採らんのでっせ。

何考えてるかよう分からんわ。

えっ、日本でも喫茶店で出る砂糖は2gか4g入りですって?

インドはまだ8gが主体なんとちゃいまっか、砂糖な、生産国はブラジル、インド、中国、タイの順でっせ。

ブラジルは中国の3倍、インドは同じく2倍ありまんのや。

そんで消費国はな、インド、中国、ブラジルですねん。

インドな、減産してもうて輸入国になってまんのや。

これから砂糖も世界の商売になりまっせ。

食いモンが商売になりまっせ。そんなら『ニュウサン』は『乳酸』か一杯に2袋て?

近う、おま。でも違いまんねん、『乳三』でんな。

メスさんたちな、若い時は朝昼晩の3回乳を出しまんのや。

年取るとな、その回数がな、減りまんのや。

そやそや、話をな、あんさんの国内出張に戻しまっさ。

そんで、あんさん、バンガロールで何を食べはったんですか?

えっ、ビーフが旨いって聞いたからイタリヤ料理屋でステーキを食べたってですか?

やっぱりやな、あんまりやな。

あのな、実はな、ハ ゙ン ガ ロー ルはな、我輩のオカンの方のオジンの田舎なんや。

ハ ゙ン ガ ロー ルの牛は肉が旨いって、昔から有名なんやで。

なんでもな、イギリスのヒトがな、そこは900mも海から高いさかい、年中気候がエエし、草もある、イギリスと同じようや言うんでな、牛を昔から飼わせて、食べてましたんやで。

これ我輩の勝手な解釈ですけどね。

そのハ ゙ン ガ ロー ル生まれのオジンのムスメである我輩のオカンとな、日本で有名なコーべ出身のオトンとをね、掛け合わせて出来たんが我輩ちゅう訳でんがな。

我輩な、世が世であればワインギュウ計画の血統書か保証書付き銘牛コーベ・ロールでしたんやで。

えっ、そんな牛がおるのかって?我輩が今付けたんですわ。

そうでっか、あんさん、食べはったんでっか。ビーフを。

ちゅうことはオジンのイトコのコかそのマゴでんな、食べたの。

そしたら、あんさんは我輩のカタキやね。

どうしてかって『ビーフテキ』やがな。分かりまっか、このシャレ?

あんまり、考えはんなや。気にしなさんなや。

ところで、あんさん、コーベへ行ったことありまっか?

えっ、アリマんがなてか。

あんさんにしてはおもろいシャレでんな。ヘェー、オオサカの大学に入ってすぐに先輩にフクハラに連れて行かれたってですか?

ヤリテ何とかって言う女のヒトが店の前にいて、先輩からも入れ、入れって背中を押されたけど、学生服で坊主頭やったし、まだ何にも知らん年やったから、なんか怖くなって、入らずに帰って来たことがあるってですか。

ホ~ン。何するところでっかフクハラって?

知らんかったことにしてくれってですか?

誰にも言うなってですか、ホ~ン。

そんで、去年、息子が神戸で結婚式を挙げたんで、家族でアリマ温泉に行って、コーべで一泊したってですか、ホ~ン。

何で、シンカンセンのシンコーべの駅が山の中みたいなところにあるのかって。

そりゃ、我輩も知りませんがな。

ロッコー言うんですかあの山。ホ~ン、ロッコーオロシって知ってるかってですか?

ダイコンオロシの仲間でっか?

違うって、山からの嵐を歌にしたオオサカのヤキュウのチームの応援歌やってですか?ホ~ン。

ヤキュウってあのクリケットと同じやつでっか?

棒持ってタマを打つやつでんな。

今な、インドでな、お金持ちになるにはな、クリケットの選手になることやって。

そんで、どこでもな、子供もがな、それやっとるんですわ。

ぎょうさんお金も貰えるらしいですよ。

イギリスにも行けるんやて。お金言うたらな、この前な、ゴルフの大会でな、インドの選手が一番になったんやて。

なんでも大きなアメリカさんの大会やて。そんでな、貰うたお金がな、何百人もが死ぬまで食べられるお金なんやて。

今度はゴルフする金持ちの子供が増えそうですわ。

日本のゴルフのメーカーさんもインドで儲かる言うて店を出し始めたらしいですよ。

あんな止まっとるタマを打って、何がおもろいんですか?

あんなん、始まりは昔の羊飼いのヒツ・マブシ、ちゃう、ヒマ・ツブシの遊びでっせ。

この町にもな、ゴルフ場あるけどな、その近くの仲間が言ってましたで、最近な、ゆっくり寝れんようになったって。

なんでもな、寝てるとな、フォー、フォーて叫び声が聞こえるんやて。

オオカミみたいな声やって。あれっ、インドにオオカミおったかいな。

そうするとな、目の前にタマが落ちて来ることがあるんやて。

この前な、もうちょっとでな、タマがタマに当たるところやったんやて。

アブナイ遊びやな、ゴルフって。

あんさん、ゴルフしませんのかいな?

えっ、今は止めたけど、前におったとこでは毎週やっとったってですか?

そんで今はヒジとカタを痛めたんでやらんてですか?

言い訳でっか、それ?

それにスコアが伸びんてですか?

ジョヤノカネ、ヒャクジュウノオー、何ですかそれ?

どうでもエエってですか?

でも、あんさん、何か体を動かした方が良うおまっせ。何かしてはりますか?

歩いとるやないかってですか、毎週日曜に町を散歩してるってですか、ホ~ン。

そんなんで、エエんですか、健康に?

えっ、なまじ急な運動したら体に良くないってですか、ホ~ン。

我輩でっか、我輩はな、運動するとな、お腹が空きまんのや。

強いて言うたらね、シッポ・フリフリでんがな。

これ結構運動になるんでっせ。ハエさん退治とオシリ掃除を兼ねてまんのやけどね。

えっ、今日は、オチがあんまり落ちておらんのでおもろなかったですって?

ほな、この辺で、サイナラ、サイナラ、サイナラ。(これからインドも砂糖や、コーヒーやちゅうて、ようけ使うようになるんやな。タイみたいに農業からのアグロインダストリーの開発が必要やな。我輩も甘いもん、食べとうなってきたわ。)

丹羽慎吾

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です