オランダ点描(13)ドラッグ

政府が、地方公共団体が、教会がドラッグを認めているといえば、大抵の方は「まさか?」と思われるでしょう。そう思うのが普通、世界の一般常識だと思います。しかし、視点を少し変えてみると、酒、煙草などの嗜好品も程度の差こそあれ、広い意味ではドラッグと同じ部類に入らぬこともないと言えます。飲酒も過度になれば、当然心身ともに蝕まれ、人間としての社会性さえ奪いかねません。ドラッグの常習者がそうであるように。

ドラッグ・薬物と一言でいっても種類はいろいろあり、識者によればほとんど習慣性がなく一時的に軽い幻覚を起こさせ気持ちよく(?)させるだけのものから、習慣性があり最終的には人間を肉体的にも精神的にも蝕んでしまうものまで、幅がひろい由。オランダでも、当然のことドラッグに対する賛否両論はありますが、この国は少なくとも他のヨーロッパの国とは少し違うユニークな考え方を持っていることはたしかです。

オランダに住み始めて間がない頃、アムステルダムの運河沿いの花市場を通りかかった時、観光客と思しき連中が不思議そうにそこで売っている鉢植えを見ながら何やら議論しています。話している内容を聞くとはなしに聞いていると、「こんなところで売っていていいのか」ということのようで、その対象とは大麻の苗です。立派に4-5枚特徴のある切れ込みの深い紅葉のような葉がでていて、MARIJUANAと書かれていました。はい、いいのです。禁止はされていません。買うことは自由です。しかし、ここでは買えても、おそらく自分たちの国には持ち込めないでしょうがね。

また、コーヒーショップという看板のある店では公認でソフトドラッグを買うことも吸うことも出来るそうです。私自身経験したことでないので、これは単なる受け売りですが、これもオランダの特徴と言えなくもありません。隣国から、また隣国を経由してその目的のためだけに不良外国人がオランダに吸い寄せられているという非難も随分聞かれます。ドイツ国境近くのV市では、マリファナを吸いたいだけの輩が町に入ってきて風紀が乱れるので、それを防ぐために(?)いっそのこと町の手前に専用のドライブスルーでも作ってはということが真面目に検討されたとか、話として聞いたことがあるくらいです。

ロッテルダムの中央駅は正面から1・2・3番線と奥に向かっていくつものプラットフォームがあります。私の赴任したすぐの頃、出口を間違えて出たところ、そこには一見周りの人たちとはちょっと違う雰囲気の人たちが大勢たむろしています。何か変だなと思いながら急いで通り過ぎたのですが、後で聞くと、彼らはその日その時刻に配られるはずのドラッグを待つ連中だったとのこと。その場所は、人呼んで「プラットフォーム・ゼロ」。注)
そして、配るのはロッテルダムの有名な教会の牧師さんだとか。要は、ドラッグを買う金欲しさの犯罪を未然に防ぐための措置として、継続して定期的に行われているある種の慈善事業(?)らしいです。

注)現在、中央駅はすっかり建て替えられているので、「プラットフォーム・ゼロ」はどこへ行ったのかな、少し気になりますね。


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