追憶のオランダ(59)逆方向に走り出した列車

慣れぬ海外生活を始めた頃はいろいろな面白い失敗の連続でした。

その頃まだ住む家も決まっておらずホテル住まいをしており、車もなかった。ロッテルダムからアムステルダムまで列車を使って何度か行った。そしてある日のこと、アムステルダムで友人と夕食を食べ10時過ぎに別れ、私は以前に何度か乗ったことのある時刻のロッテルダムが終点の(はずの?)列車に乗った。これなら乗り過ごすことはない。酒も入っていい心持ちでウトウトしていたが、どうも列車が止まったらしい。しかし外を見てもロッテルダムではないと思い、また目を閉じていたところ、突然動き出したのはいいが、今までとは違う反対方向に動き出したのだ。何ということだ!

どうもこの日に限って、この列車は行先変更になってロッテルダムまで届かなくなっていたようだ。そして、さっき止まっていたのはどうもデルフトの駅。もともと3-4人しか乗客がいなかった車両だったが、気がつけば私以外は誰もいなくなっていた。皆デルフトか、デルフトに着くまでの途中駅で降りてしまっていたのだ。アナウンスがあったかどうかも分からないし、仮にあっても理解できずそのまま乗っていたと思う。
そして、デルフトからライデンまで逆戻りしてしまった。そこで、止む無くそこで降りることになったが、次のロッテルダム行きの列車の時刻を見ると深夜1時過ぎ(オランダでは深夜でも本数はわずかだが一応列車は走っている)。ライデンに着いた時には11時半頃で、結局ライデンの駅で1時間半以上待つ羽目になった。これも経験かと思い諦めて待つことにした。時期は6月下旬だったが、夜になると結構冷え込み、先ほどまでのほろ酔いが一度に醒めてしまった。手持無沙汰で薄暗い構内をブラブラしていると、同じように次の列車を待っている人がいて、お互い時間潰しに取り留めのない話をしたことを思い出す。結局その日は、というか既に日付が変わって、ホテルに着いたのは深夜2時を回っていた。

いつもはそうだったからというだけでは、今回もまた同じだとは限らない。おそらく、何かの理由でその日には変更があったことを知らせる何かサインがあったはずだ。それも列車の始発駅のアムステルダム駅で。それを見落としていた結果だ。もしも他の客がデルフトで一斉に降りた時、降りていればどうなったか。少なくともライデンまで逆戻りはしなくてよかったかもしれないが、結局次のロッテルダム行きがライデンで再度乗った深夜のものと同じであれば、デルフトで降りていても結果は同じだったはず。要は、アムステルダムで乗る時に、その日の最終のロッテルダムまで届く列車が何時発かを確かめて置く必要があったということ。これは、仕事でのことではなかったので、一人馬鹿なことをやった、で終わったが、これ以降少し注意を払うようになったと思っている。人間失敗せねば学ばない。失敗してもなお学ばないことも往々にしてあるにはあるが。

 

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