オランダ点描(4)木靴

大きなお椀のように見える木靴。クロンペンというのがその名前です。日本のポックリと同じように、履いて歩く時の音をそのまま名前にしたように思えます。

履き心地?あまりよさそうには思えません。昔は藁などを緩衝材として入れて、大き目のものを履いていたようです。今履くなら、厚手の靴下を履いてからということになりますね。私自身は実際に履いて使ったことはありません。

今では普段の街中でも木靴を履いている人はほとんど見かけることはなく、週末など庭で土いじりをしている人とか、ちょっとした農作業をしている年配者などが履いているのを目にするくらいです。じめじめした所とか、ちょっと汚いところでは長靴感覚で足元を気にせず自由に動けるメリットはあるようです。

一度あの大きな木靴を履いて器用に自転車に乗っている老人を見かけたことがあります。実際、木靴をよく目にするのは、インテリアとして壁にかけて花を生けたり、小物入れに使ったりが多く、たまには玄関ドアにかけてあったりします。いずれも綺麗にデコレーションされたものです。そう言えば、うちの女房殿も木地の小さい木靴を買ってきて、アッセンデルフトというオランダのトールペインティングで絵付けをしていました。出来上がりはどうでしょうか。

オランダ人の感覚からすれば、木靴は日本の下駄と同じです。日本でも最近は下駄履きの人は見られなくなりましたが、我々の下駄への愛着は「普段着と下駄履き」という言葉で表現されるように、飾らない日常を表しています。オランダでも木靴は徐々に日常性を失ってきているようですが、民族にとってはどこか深いところにしっかり根を張っているように感じます。

同じ木を素材に使っていても日本の下駄は暖かい土地柄から足をすっぽり包み込むようにはならず、しかも扁平に作ってありますが、木靴は足を包み込む立体構造になっている。着物と洋服の構造的な違いともどこかでつながるかもしれません。

木靴の材料は柔らかいポプラのようですが、アムステルダムの北に位置するザーンセ・スカンスというところで観光用ですが木靴を作っているところがあります。今は機械で削りだしていますが、昔ながらに木の塊を万力で固定し、長い柄の鑿で彫っているのが見られます。

宮川直遠

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