手拭いの暖簾(33)蝶々と鶏

この蝶々と鶏を花の中に埋め込んだような図柄は、グラフィックデザイナー杉浦非水の作品です。デザインというか図案というのは実物とは全く違って、色も形もすっかりデフォルメされていてビックリすることが度々です。

この手拭も色合いに引きつけられて、なかなか蝶と鶏が見つけられませんでした。花の茎に蝶々がいて、下の方に鶏。鶏の尻尾の何とも太いこと!その上黒ですから、インパクトも強くてびっくりです。鶏のたくましさが感じられます。 チョコレート色と、黒と、ブルーがかったグレーが何とも言えずしっくりと落ち着いた色彩です。

色あいというのは、自分の眼で見て初めて感覚的にとらえることが出来るように思います。今もグレーの色を伝えるのに迷いました。薄い紫色が混じっていると表現してもよいように思いました。写真にするとまたカメラがとらえた色になります。アート作品に限らず全てのものは自分の目で見て感じることが大切だと思いました。

杉浦非水という名前を聞いたのはいつのことだったでしょうか。不思議な名前!「イメージコレクター 杉浦非水展」という美術展のパンフレットが手に入りました。近代美術館で2019年2月から前期後期で5月末まで開かれていました。折角の展覧会なのにどうしたことか行く機会を失ってしまい、悔しい思いをしていました。フランスでは一度開かれた展覧会が次に開催されるのは80年後と言われていましたから、もう見ることが出来ないとあきらめていました。

でも2021年9月に開かれたのです。「杉浦非水 時代を開くデザイン」。場所はたばこと塩の博物館。少し距離はありますが今度が見逃さないぞ!と気合を込めて出かけました。三越百貨店のあの白地にボタン色の大小の石の転がったような包装紙のデザインをされ、ポスターや雑誌の表紙などを手掛けられました。図案の好きな私はその他のデザイン画や本の装丁、スケッチブックに魅せられました。

これから80年は生きられませんが、今度開かれたらまた見に行きたいと思っています。1876年生まれで1965年に亡くなっていますから同じ時代に生きていた方なのでした。

そのようなことで、やっと出会えた図案の手拭いです。

AZ

 

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