ヤタガラスの「教えてワイン!」8~コート・デュ・ローヌ
フランスの南山エリアは、強く激しいワインのできるところだ。太陽エネルギーも量的に十分すぎるほど豊富で、気温の変動も激しく大きい。南側で山側、すな わち内陸性気候が大きく作用しているエリアだ。コート・デュ・ローヌのワインの強さや激しさを表す言葉として、「タフ」、「武骨」、「強烈」、「荒々し い」、「骨太」、「一本気」、「頼りになる」などがある。
いかにも同じような意味の言葉が並んでしまいワインも単調になりやすい。 コート・デュ・ローヌは、ほぼ完全に白ワインには向かない地域といっていい。しかし、標高が高い地域で太陽エネルギーを溜め込まず、適度に逃がす地形のと ころでは白用の葡萄が栽培され白ワインもつくられている。やや黄色がかった色調はやはり豊富な日照量を物語る。味わいも線の細いものではなく、骨格のしっ かりしたタイプのものに仕上がっている。
では、赤ワインには無条件で向いているかとなると、場所によってはそうでもない。太陽エネルギーが強すぎて、そこの赤ワインはただ強いだけの単調なものに なりやすいところもある。実際には存在しているはずのニュアンスに富んだ陰影が、強いアルコールやタンニンで覆い隠されてしまうのだ。
そこで、赤ワインを真っ正直につくらないで、少し弱めてつくる。つまり葡萄の皮の色素とタンニンを少しだけ溶け込ませたロゼワインにする。角がとれてい て、なおかつ折り目正しい味わいのワインになる。よりよい赤ワインを目指したら、ロゼワインになってしまったわけだ。ロワールでは白ワインを強めてロゼワ インをつくっていたが、丁度反対のケースである。弱く穏やかなロワールと強く激しいコート・デュ・ローヌはシンメトリカルな関係にあることがよくわかる。
(出典:安間宏見著「ワインの謎解き」)
ヤタガラス