フランスあれこれ81 フランス人の算数=今昔

私自身そろばんが不得手で、就職した当初の苦労を思い出します。二度三度と計算するたびに答えが異なり、遂には隣の席の女性にお願いして確認してもらったことを思い出します。

パリに赴任してすぐの頃の秘書の算数には私はほとほと困ったものでした。都度違いますと言って返しますと机の下で指折り数えている風景を何度も見かけました。しかし彼女だけが計算に弱いのではありません。フランス人全体の傾向です。

当時の想い出ですが、大きなお店はともかく個人商店などでよく見かけた清算方法です。二つ以上の買い物はメモ用紙に計算して提示します。例えば合計して720円だったとします。小銭の20円を持っていた場合、まず20円、そして1000円、合計1020円で300円のおつりを期待するかと思いますが、フランスではまず受け付けられません。20円を返して、改めて品物が720円、それに10円を8回加えて800円、それに100円x2を加えて合計1000円。そこで商品とおつりの合計が1000円で支払いの1000円と交換と言う訳です。それまで品物はテーブルに置いたままでお客には渡しません。彼らは頭の中での計算はせず、飽くまでも等価交換ということです。

ところがこの話にフランス人から異論が出ました。この清算方法は顧客の為に店の人がやっていることで、数字に弱いのは顧客、おつりをしっかり理解してもらう方法としてやっているのだと言うのです。まあ、いずれにしても算数に弱いことは間違いないでしょう。

この時代に既に消費税方式が導入されていました。商品価格は全て税込み。当時消費税20%でしたが、税込み価格で100円のものは20円の税金、商品代は80円という事です。言い換えて日本式にすると80円の商品に20円の税金、即ち消費税25%という事になります。こんな計算はフランス人にはとても無理という事で内税方式を採用せざるを得なかったのだと思います。

さて昨今はどうなっているのでしょうか。過日(数年前に)フランスを旅行された人からレシートを見せて頂きました。いつの間にか税制が変わって日本と同じ外税方式になっていました。しかし飽くまでも従来と同じ税込み価格を明記したレシートでしたが、同時に日本と同じ外税の計算も記録されていました。そして税率(外税)は20%でした。欧州は大体20%前後のようです。(但し多くの商品に軽減税率が適用されています。)

では、フランス人がこんな計算が出来るようになったのか?まさかそんなに変わる筈はない! 私の先入観からの結論はデジタル計算機のお陰でしょう。益々頭を使わず、計算機の命令通りに動くだけでしょう。日本だって同じですよね。ひょっとしたら日本人の算数能力もフランス並みに落ちている可能性? いや、これは失言、大変失礼しました。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です