新加坡回想録(8)厳しい罰金制度

クリーンシティともグリーンシティとも言われるシンガポールですが、どうしてこんなに街がきれいなんだろうと疑問に思ったことはないでしょうか。私自身、駐在前に何度か出張で訪れたときに「これが東南アジアの国か?」と驚きました。仕事の相手先は主に隣国のマレーシア、それも東マレーシアであるボルネオ島だったので、数日間の仕事帰りにシンガポールに戻ると、美しい街並みを見てほっとした気持ちになったものです。

シンガポーリアンは、街角でゴミやガム、たばこのぽい捨てをしない礼儀正しい国民だったでしょうか。いやそうではありません。現地でこんな話を聞いたことがあります。ある時、華人が二階の窓から自転車を投げ捨てたといいます。どこの国の人でも、時には気がふれているのかと思うおかしい人はいますが、この話は、過去シンガポールに移民してきた中国人の礼儀知らず、道徳のなさを象徴して言った言葉だと思います。

このような社会道徳を持たない人々を世界に通用する国民に仕立て上げるために、政府(リー・クアンユー首相)が取った苦肉の策がこの罰金制度であったと思います。今ではもう有名になりましたが、シンガポールには厳しい罰金制度がいろいろとあります。その中でもポピュラーなものをいくつか紹介しましょう。

ゴミのポイ捨て
道路でゴミをポイ捨てするのが見つかると500ドル(現在約40000円)。しかし、それでも結構平気でゴミを捨てる人も多く、 見つからなければ平気だと思っているシンガポーリアンも多いようです。最近の事情はどうでしょうか。

煙草の持ち込み
海外からの煙草の持ち込みはすごく厳しい。何しろ税金が高く1箱700円ぐらいで売られていて、毎年値上げしています。空港で日本人の男性が一人で入国する場合、調べられるケースが多かったと聞きます。勿論、税金を払えば持ち込めますが、日本から持ち込んだ税金不払いの煙草をホーカーセンターで吸っているのを見つかり、罰金500ドルを支払う羽目になった日本人がいたそうです。

ガムの持ち込み
これも有名になりましたが結構見かけます。日本からのお土産でガムを持っていくと喜ばれました。空港での煙草のチェックは厳しいですがガムはあまり調べられないとか聞いたこともありました。2004年に一部解禁:薬局で指定の商品のみを、登録した消費者のみに販売できるようになったとかいう話も聞きました。その後どうなっているのかわかりません。

禁止区域での喫煙
公共の施設・乗物・デパート・空調施設のあるレストランなどでは全て禁煙です。例外は、パブ・ディスコ・カラオケバー。違反すると、1000ドル以下の罰金です。

交通違反
日本同様いろいろな罰金があります。スピード違反、ピーク時のバスレーン走行、追い越しなど。特に駐車違反はうるさく、あちこちににカメラが据え付けられていて、交通違反は結構発見されるようです。

車内での飲食
最近日本では満員電車の中でも堂々と飲食している若者もいますが、シンガポールでは公共の乗物内での飲食は罰金を課せられます。

タンやつば吐き
結構罪は重く、初犯でも1000ドル、再犯は2000ドルの罰金です。 香港のディズニーランドでの中国人のタン・つば吐きのマナーの悪さがニュースになっていたことがありました、このように罰金制度を決めないと中国人は平気でタンやつばを吐くと言われている。

ボウフラ発生
赴任した時に最初にこのことを言われたような気がします。これは蚊の発生により感染しデング熱やマラリアに罹ることを防止するため。コンドミニアムでも定期的に薬の散布を行っていました。

トイレの水の流し忘れ
冗談みたいですが本当の話。放っておくと流さない人が多いらしいです。

その他、重犯罪で特に厳しく罰せられるのが、

ドラッグの所持・販売
これに関しては他の東南アジア諸国でも同様ですが非常に厳しい。シンガポールでは、大麻500g以上の所持は、有無を言わさず死刑になります。たまに外国人が捕まり、母国の政府が嘆願したが死刑は覆らなかったという話がニュースになりました。

わいせつ物所持・販売、賭博行為
小さい国だけあってマフィアは存在しませんが小悪人は結構います。仲間内での賭け事をこっそりやっている人は多いです。何しろ中国人は博打が大好きですが、賭博行為は見つかると重犯罪です。
罰としては、死刑以外に強制労働・鞭打ちなどがありますが、これは思ったよりかなりきつく、暫く立ち直れないと聞きます。

きれいな街と厳しい罰金制度を揶揄して「Fine City」と言われます。
英語で"fine"には、「素敵な」という意味のほかに「罰金」という意味があります。

(西 敏)

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