シンゴ旅日記インド編(111)インドの電気事情の巻
インドの電気事情の巻 (2010年7月記)
インドの電気事情はよくありません。出張で地方に行きますとお客様の工場はおおよそ週一日の停電日があります。中には毎日3時間に加え週一日の停電のところもあります。
インドは水力発電に頼っていますが、2012年から始まる5カ年計画では原子力発電所の増設が盛り込まれており日本を含む先進国の受注競争が始まっています。
私たちのお客様は鋳物工場ですのでスクラップを溶かすために大量の電気を消費します。電気が来なければ仕事ができず稼働率が下がります。電気代は製造原価の半分近くを占めます。しかし自家発電ではコストがかかり過ぎます。
インドでは3月から5月までの乾季が特に電気事情が悪いのです。この電力不足がインドの工業化の妨げの一つであると思います。
私の住むプネは毎週木曜日が工業電力停電(メンテ)の日です。電気を多く使う工場はその木曜日を休日とし日曜を出勤日に振り替えているところもあります。停電は一般家庭にも影響しています。私の住むアパートは自家発電機があるのでまだ良い方です。停電は夕方に多く停電になると一旦蛍光灯の明かりが消え数秒後に再び点灯します。アパートの自家発電が稼働したのです。しかし冷蔵庫やクーラーからは音が聞こえません。静かなままです。発電機の容量が少ないので蛍光灯と天井ファンのみへの電気の供給で、コンセントへの供給は止めているのです。
ですから冷蔵庫が、テレビが、クーラーが、洗濯機が使えません。コンセントから電源を取るパソコンは困らないのかですって?私の前任者も困っていたのでしょう。盗電まがいの方法でしのいでいました。それは玄関上の電球を外しそのソケットに電球ソケット用コンセントを差し込んで延長コートを接続してパソコンに電源を供給できるようにしてあるのです。
私の事務所の場合はもっと大変です。商店形式の店舗2小間(中でつながっている)を借りて事務所としています。停電対策はバッテリーです。最初はガソリンエンジン式の発電機を予定していたのですが、発電機ですと地下の駐車場に置いておかねばならないので停電となると駐車場までエンジンを掛けに行かねばならないので直ぐ切り替えができるバッテリー式になっているのです。バッテリーを事務所の天井の低い二階に16個、一階に6個と置いています。長時間の停電には対応できません。バッテリーには充電用と停電時の切替用にインバーターがついていました。そのインバーターではエアコン2台までが限度で4台あるすべてに対応できなかったので、これではいかんと私がインバーターの仕様アップを業者に依頼するよう部下に伝えました。
すると修理のためインバーターを業者のところに持ち込んでいる間に停電がありました。帰宅直前でした。インバーターがないのでシャッターをバッテリー電源で下ろすことができませんでした。どうやって入り口のシャッター二つを下ろすのか?チェーンです。手動式です。大変な時間と労力を要します。私もやってみましたが手にチェーンのさびがべっとりとついて汚れました。
チェーンは当然事務所の内側についています。シャッターを閉じたあと後にどうやって外に出るのか?その出口は事務所用でない隣の小間からです。そこは常時シャッターが閉まっていてそこのシャッターは建物の外でクルクルとハンドルで回して上げ下げする方式なのです。
そのクルクル回すハンドルはどうするのか?それは外の郵便受けに入れて帰るのです。不用心ですよね、まったく。次の写真は毎朝のシャッターを開ける手順です。
先日は私が事務所に朝一番乗りし二つ目のシャッターを開けている時に停電になりました。一つ目も丁度上の写真のように半開きの状態でした。それでその半開きのドアから腰を屈めて中に入りました。しかし事務所って電気が無ければ何もすることないですよね。電気が来るまで入り口の階段で書類読んでいました。前述のインバーターが修理され帰ってきました。しかしバッテリーではやはりエアコン2個に対応するのが限度と言われました。そして据付業者が来てインバーターを二階に上げて再接続しようとしたのですが、どれが高電圧用配線かどれがバッテリー用配線か接続かを業者が分らなかったのでそのままにして帰ってしまいました。インドって時間が沢山ありますよ。このインドの時間を輸出してお金を稼ぐ方法はないものかしら。
丹羽慎吾