シンゴ旅日記ジャカルタ編(14) 散歩しながら考える(砂漠のバラ)の巻
散歩しながら考えるの巻 砂漠のバラ (2019年9月記)
朝散歩のコースはアパートの近くのいくつかの住宅地をその日の気分に合わせて選んでいます。
それぞれの住宅地の入口には守衛さんがいますので、「スラマット・パギ」と挨拶しながら入っていきます。住宅地に入ると道路脇や家々の庭の木々を眺めながら歩きます。
最近は道路に面した庭先に並べてある鉢植えの花が気になるようになりました。
そして興味を惹く花があると立ちどまってゆっくりと眺めます。
そんな私が特に気になったのは根本が土偶のように太くて、枝が自由に伸びている小さな木でした。その根本の造形が素晴らしいのです。同じ形が二つとしてないのです。
見ているとその花の生い立ちがどんなんだったかを考えさせられてしまうのです。
みなさん、lこんな木をご覧になったことがありますか?
大体三軒に一軒の割合でその花の鉢植えが置いてあります。
中には盆栽のように庭先にたくさんの鉢が並べてある家もあります。
最初にその花を知ったのはその花の鉢植えがたくさん並んでいる家でした。
私がその花を眺めていると中からご主人が出てきましたので挨拶をしました。
そして、ご主人の話をしていて、私が日本人であるとわかると、彼はスンバワ島のスミトモの銅鉱山で働いたことがあると言いました。
私 この鉢に植えてある植物の名はなんですか
主人 私は知らないけど、女房が知ってると思うよ。
と言い、家に向かって大きな声を上げて奥さんを呼びました。
すると奥さんが玄関からから出てきて私に説明してくれました。
奥さん これはカンボジアと言うのよ、同じ種類で大きな木はカンボジア・ジュパン(日本)よ。
ほら、この団地の入口にも生えているでしょ。
この花は挿し木でも増えるのよ。
でも、根本が太いのは苗から育てたもので、挿し木で育ったものは根本が太くならないのよ。よかったら、一鉢持っていきますか?
私 いいえ、結構です。私はアパート住まいだし、植物は日本には持って帰れないのです。 でも、面白い形の花ですね。
私はその木について知りたくなり、アパートに帰りネットで調べてみました。
「カンボジア」、「カンボジア・ジュパン」で検索しても出てきませんでした。
「インドネシア 植物」で検索し、現われた植物の画像を見て行くとその中にカンボジアがありました。
それは正式にはアデニウムという名の植物でした。
さらに検索して行くと「NHKの趣味の園芸」のページに次のように書いてありました。
(特徴)
アデニウムの仲間は、南アフリカ、南西アフリカ、ソコトラ島、アラビア半島原産です。
美しい花が咲くものが多く、大きく肥大する幹や根が特徴の植物です。
「砂漠のバラ」と呼ばれるものがよく流通していて、そのほかにも八重咲きや多様な花色の園芸品種がつくられています。
アデニウムは、株を大きくして花を楽しむ以外にも、独特のフォルムを生かし、盆栽のように仕立て、肥大した根や幹を楽しむこともできます。
夏の暑さには強いですが、寒さには弱いので、休眠させて冬越しさせます。
日光不足だと徒長するので、春から秋はよく日に当て、堅く締まった株にします。
アデニウムの語源はアラビア半島のイエメン共和国の南端にある港町のアデンからです。
アデンはアダムのイブのエデンの園であったと言われる土地の一つです。
きっとアダムもイブの二人もアデニウムの花を見たのでしょうね。
なおインドネシアで「カンボジア・ジュパン」と呼ばれる木はレイに使われるプルメリアのことです。
アデニウムとプルメリアは幹の造形や花の形は違っても同じキョウチクトウ科の植物なのです。
植物は枝の先端を動物に食べられたり、雨風などで折られたりすると、折られた枝のすぐ下の部分から新しい芽がでて新しい枝が生えてきます。
住宅地の庭先にあるアデニウムの枝を良く観ると枝を切られて、その下のすぐ横から新しい枝が数本出ているのもありました。
ある家の庭さきで鉢に並んだアデ二ウムを眺め、写真を撮っていたら、家の中から女性が出てきて「どうして写真を撮っているの、どこにでもある花でしょ。」といわれました。きっと彼女は私が家の内部を調べている怪しい人だと思ったのでしょうね。。
アデニウムの根本の形を見ていたらその生い立ちに苦労しただろうなと思い句を作ってみました。
〇俺の過去 見ればわかると アデニウム
〇我は我 君は君だと アデニウム
〇咲くよりも 生きることだと アデニウム
〇一族が 肩寄せるよう アデニウム
〇この私 砂漠のバラと アデニウム
〇アデニウム どの花みても 個性的
丹羽慎吾